|
「ルルーシュには後で会わせるよ。それよりも先に会わせたい人がいる」 今すぐ会わせなさいよ。そう言いたいのを我慢し、カレンは頷いた。警戒されるのは当然で、 スザクの気持ちはよく解る。立場が逆なら私も暫く会わせないだろう。 スザクはルルーシュの騎士。 カレンは裏切りの親衛隊長。 玉城は裏切りの部下。 彼の剣であった事を、駒であった事を自ら捨てた愚か者達だ。 我儘を言うわけにはいかない。 無事に保護された事が解っただけで十分だから。 それにナナリーの事もあるから、こちらの都合ではなくあちらに合わせる必要もある。 部屋は2室用意され、私と母、玉城と兄がそれぞれを使うこととなった。 母はお世話になるのなら何か手伝いたいと、桐原に仕えるメイドと共に何処かへ移動し、スザクはカレン、玉城、ナオトの三人を連れ、迷路のような屋敷の中を歩いた。 「なんか迷子になりそう。凄く広いのねここ」 外観以上の広さじゃないかしら。 「侵入者の対策も兼ねているから複雑なだけだよ。すぐ覚える」 やがてたどり着いた先にはエレベーターがあり、それに乗り地下へと移動した。 予想以上に深くに降りていくので、深すぎない?と尋ねると、金持ちが最悪の事態に備え用意した核シェルターの役目も果たす場所だからと答えた。おかげで助かったという言葉の意味が理解できず、玉城とカレンは顔を見合わせた。 やがてついた先には通路と扉。 扉を開けた先は広々とした倉庫のような場所で、多くの機材が所狭しと置かれていた。 スザクに先導されるまま歩いた先に、見慣れた物が置かれていた。 「え!?嘘!?紅蓮!!」 銀色の爪を右手に持つ真っ赤なKMF。 カレンのもう一つの体と言ってもいいそれが、重厚な威圧感を放ち倉庫の奥深くに置かれていた。 「なんで!?なんで私の紅蓮がここにあるのよ!?」 「しかもこれ弐式じゃねーよな、ダモクレスの時のか?」 紅蓮に駆け寄った私を追ってきた玉城も、驚きの声を上げた。 「聖天八極式よ!私があの時代に乗ってた機体だわ。見て、暁もある!」 一番目立つ紅蓮に意識が言っていたが、見るとまだ一部しか組み上げられていない暁も置かれていた。しかも直参仕様もある。 「これがナイトメアフレーム?ホントにロボットって感じだな・・・こんなのにカレンが乗ってたのか!?」 驚きの表情で三人が紅蓮を見ていると、後ろから声がかかった。 「でもまだフレームだけなのよねぇ」 サクラダイトには困らないんだけど、他の材料がこの時代だと入手しづらくてねぇ。 その声に、カレンは慌てて振り返った。 記憶にある姿よりも若いが、見間違えるはずがない。 「ラクシャータさん!」 「はあぃカレン。相変わらず元気そうねぇ。所で私の可愛い紅蓮のパイロット募集中なんだけど?」 ラクシャータはいつになく嬉しそうに尋ねた。 「はい!私に乗らせてください!」 カレンは満面の笑みで、手をあげて答えた。 言うと思ったわと口にしながら、ラクシャータは自嘲するようにその口元を歪めた。 「・・・こんな幼い子供にKMFなんて正気の沙汰じゃないわよねぇ。せめて15歳になるまで訓練をして、その間は他の誰かをって思ったんだけど。でも、紅蓮はカレン、あんたの手足だものね」 子供の体でも生存率が上がるシステム構築に、ちょっと時間がかかってるから乗るのは先だけど。それまではテストに付き合ってもらうからね。 「はい!」 嬉しそうな声で返事をするカレンを不安げに見ていたナオトは、意を決したようにラクシャータに向き直った。 「あ、あの。俺が乗ります!」 「お兄ちゃん!?」 「・・・初めて見る顔だと思ったら、あんたが噂のカレンの兄なのね・・・まずはシミュレーターで適正値見てからになるわ。話しはそれから」 シミュレーターは出来てるから全員今のデータをよこしなさい。 これで、カレン、玉城、ナオトは今日一日KMFの実験でここに居ることが決まった。 その様子にスザクは安堵の息をつき、静かにその場を後にした。 カレンはゼロの剣。 ゼロの親衛隊の隊長。 彼女にとってゼロはルルーシュ。 つまりはルルーシュの剣なのだ。 一時的な契約ではなく、彼に心から望まれ、彼の剣であった者。 一度裏切ったというのに、それでも側にいることを許された者。 もしかしたらスザクが失った信頼を彼女は持っているかもしれない。 だけど、彼の横を渡すつもりはない。 譲るつもりはない。 彼の剣は、僕だ。 自身に湧き出た感情は不安と嫉妬。 それを自覚しながら、スザクはルルーシュに今すぐ会いたいと屋敷の中を走った。 そして、たどり着いたルルーシュの部屋の扉の前には、見知った女性が立っていた。 |